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クレジットカードと一体となり沿線価値の向上目指す
PASMOの残額が設定額(2000円)を下回っていた場合、一定額を自動的にチャージする「オートチャージサービス」はクレジットカードで決済する仕組みです。現在は、パスモとジェーシービー、UFJニコスが提携して新規に発行する「Pastownカード」か、PASMOに参加する交通事業者系のクレジットカードで決済する形になっていますね。PASMOとクレジットカードが一体になったカードは発行しないのですか。
パスモの早川弘之事業部次長兼情報セキュリティ課長
早川 検討中です。すべてのサービスを開始時点で用意するのは時間的に難しかった。今は、ほとんどの方がクレジットカードを持っています。オートチャージのために、新たにカードを持つのはストレスなのではないかという考えもあり、最初は既存カードにオートチャージサービスを紐付ける形を取りました。
■交通事業者系のクレジットカードではなく、通常のクレジットカードでの決済はできないのですか。
早川 今の段階ではシステム的に難しいです。オートチャージサービスを可能にするには、クレジットカードのシステムの中に専用の機能を追加する必要があります。各交通事業者とも、そのための投資をしています。
今回、PASMO開始を機にクレジットカードを発行し始めた交通事業者もあります。クレジット会員というコアな顧客を獲得し、自社のグループ戦略に取り込んでいく上で、オートチャージサービスは非常に重要なコンテンツになるととらえているからです
鉄道に乗る度にポイントがたまるサービスなども
■PASMOとクレジットカードを一体で進めていく戦略とは、例えばどんな内容でしょうか。早川 各社各様の工夫、アイデアでサービスを展開していきます。ポイント戦略で言えば、鉄道に乗る度にポイントがたまるサービスを提供する事業者もあります。グループに属すデパートやスーパーで買い物をしてためたポイントで鉄道に乗れるサービスや、ためたポイントを航空会社のマイルと交換できるサービスを提供する事業者もあります。
沿線商店街など、地域活性化と結び付ける試みもあります。鉄道に乗ったり、商店街で買い物をすることでポイントがたまっていく。半年後には、そのポイントを系列のデパートでネックレスに交換できる…そんなイメージでしょうか。
今後は沿線の大学、企業、大型小売店との連携なども出てくるでしょう。電車に乗った後に買い物をするとポイントが多く付くとか、いろんな工夫が可能だと思います。
クレジットカードの魅力を生かしてPASMOを普及させる。逆に言えば、PASMOが普及していくからこそ、いろんなサービスができる。こうして、最終的にはグループの売り上げ増や顧客満足度の向上、グループイメージの向上、沿線価値の向上などに結び付けていきたいと考えています。
■Suicaとの共通性を重視しています。PASMOとSuicaの間で、利用客の奪い合いにはならないのでしょうか。
早川 PASMOとSuicaの機能は交通カードとしては共通です。しかし、先ほどお話ししたように付加的なサービスは事業者によって異なります。このため、ライフスタイル、住んでいる沿線などによって、どちらのカードにするのかを決めていただくことになるでしょう。競合する面は確かにあります。
ただ、PASMOとの相互利用が可能になったメリットはJR東日本にとっても大きいのではないかと勝手に思っています。PASMOによって、Suica が使えるエリアが広がりますから、ビジネスチャンスも膨らむ。
また、PASMOと相互利用が可能になったことで、JRと私鉄を乗り継ぐ定期券もSuicaに載るようになりました。これまで、私鉄の定期券はSuicaに載りませんでした。これを機にSuicaを持つようになる人も多いと思います。
世界最大規模のICカード乗車券システムへ
■PASMOのシステムを開発していくうえで、いちばん大変だったのはどんな点ですか。早川 サービス内容や運用について、参加事業者間で打ち合わせし、合意していく作業は大変でした。参加事業者が非常に多いので。
特に、システムの相互運用性を取る作業には細心の気を配りました。
PASMOは鉄道だけで26事業者が参加します。自動改札機は単純に言って26種類。実際には、同じ会社でも駅によって使っているバージョンが違ったりするので、その2〜3倍の種類の機種が稼働している。どの改札機から入り、どの改札機から出ようとも、間違いなく料金を計算し、乗客が出入りできるようにしなければならない。自動券売機も同様です。
乗車、乗り換え、降車で考えられる限りの組み合わせを試してみました。その組み合わせパターンは12万通り。これらすべてを、テスト員が動作確認していきました。券売機でカードを買って、自動改札機を通って、降りて…という一連の流れを、すべて実際にやってみたのです。
同じ券売機で買ったカードでも、この改札機では問題ない、この改札機では問題が出る、といったことが起きます。検証には、膨大な時間がかかりました。2005年の11月からテストを開始し、終わったのは去年12月でした。
■サービス普及の手応えはいかがですか。
早川 地下鉄や私鉄、バスの定期券を持っている人は、サービス開始直後に大挙してPASMOに切り替えると思います。4月は新入学・就職シーズンでもありますし、サービスは一気に定着すると見ています。5年間で800万枚発行という目標のうち、2007年度中に500万枚の発行を見込んでいます。目標とするICカード化率は定期券で80%、定期券以外では50%です。
将来的には、Suicaと合わせて3000万枚。世界最大規模のICカード乗車券システムに発展させる考えです。既に、Suicaだけで1850万枚という基盤がありますので、実現は可能だと思います。3000万枚持っていただけるカードになると、新たなビジネスチャンスが生まれてくると思います。商店街のポイントカードと共通のカードになったり、大学の学生証になったりという展開が考えられる。電子マネーとしても、首都圏で最もたくさん使われるカードになっていくでしょう。
私自身も、影響力の大きなプロジェクトをやっているのだということを実感します。会社の規模は小さいけれど、社会のインフラとして、責任は重いと痛感しています。
小林 佳代
1967年東京都生まれ。1990年慶応義塾大学法学部政治学科卒業。同年日経BP社に入社。「日経ビジネス」記者などを経て2001年に退社、フリーに。現在、「日経ビジネス」、「日経ビジネスアソシエ」、「日経エコロジー」など、主に経営・ビジネス関係の媒体で執筆中。
nikkeibp.jp
http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/person/epoch/070326_pasmo3/
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